きみのとなり
長居しすぎて、グラスについていた水滴が乾いてしまっている。
グラスの中のオレンジジュースも飲む気になれない。
私は、河野さんの言葉を思い出す。
「好きだよ?ちゃんと恋愛対象として。でも……」
「でも?」
「拓海を好きだっていう気持ちより、岩村のことが好きだっていう気持ちの方が大きくて。結局、拓海に対しては甘えてただけ。最初から分かってたけど。岩村に対しての当て付けだったのかな…」
「河野さんは、怖くないんですか。拓ちゃんと別れてすぐに岩村さんのところにいくなんて。周りの人になに言われるか分かんないじゃないですか。」
現に、ちょっと私は怒ってる。
拓ちゃんのこと、振り回した……。
なんだか、私と同じに見える。
「怖いよ。私、こんなんだからさ、女の子の友達少ないし。でも、それで岩村のこと諦めたら拓海に対して最低なことしてるし私自身、自分のこと大嫌いになる。」
強いなって、思った。
拓ちゃんが好きだった人なだけあるな。
「あ、そろそろ来るかな。この近くで岩村と待ち合わせなの。行かなくちゃ。」
「あ、そうですか……」
「……昨日。拓海は来てくれたけど、ほんとのお別れのためだったんだ。もうこんなふうに来れないって。未来が泣くからって。」
「拓ちゃんが?」
「うん。そう。……いっぱい意地悪しちゃってごめんね。じゃあね。」
河野さんはニコッと笑ってレジへ向かった。
「あ……」
伝票……
私の分も払ってくれたんだ……
今度、お礼言わなきゃ。
なんて思いながら私はぼーっと目の前のグラスを眺めた。