きみのとなり
私はボールを追い掛ける拓ちゃんを眺めながら、うーんと考える。
「…かっこいい所、優しい所、サッカーが好きな所、頭がいい所、勉強教えてくれる所……あと…」
「…みぃたん?」
私は無理に笑顔を作って田中君を見た。
「…あと…隣にいつもいさせてくれてたこと」
「…隣」
「今は私の場所じゃないよ。河野さんの場所」
私は悲しい気持ちを隠して話し続ける。
「私はもう拓ちゃんと一緒にいちゃいけないの。彼女は河野さん…私は幼なじみ」
「辛いよそれは」
「うん…辛い」
そこまで話して私達は黙り込んだ。
「拓海ー!!」
え…
思わずその声で呼ばれた名前を聞いて振り向いてしまった。
河野さんの声…
いつの間にか終わっていた練習試合。
どうやらまた拓ちゃんがゴールを決めたらしい。
でも…そんなことどうでもいいよ……
「上原!!」
何……やってんの…?
「…た…くちゃん…」