きみのとなり


鈴木君のその一言で私は押し黙った。



「好きなんだなーって思っただけ」



「…」



「石川先輩はどこで見てるんだろな。花火」



「…分かん…ない」



私は泣きそうになるのを堪えて鈴木君が見つめる花火を見た。



「拓ちゃんは…彼女といるよ。多分」



私が笑いながら話すと、鈴木君は「そっか」とだけ言って眉を下げた。




「…サッカーの練習してんの?」



そして急に話をそらす。



多分、私に気をつかってくれたんだと思う。




「うん。まだ始めたばかりだけどね」



「ふーん」




拓ちゃんに教えてもらってるかとか、聞かれると思ったけど、鈴木君はそれ以上何も言わなかった。




構えていた私だから、ちょっとだけホッとした。




「……今度…」



「…ん?」



黙っていたら、鈴木君はまた口を開いた。




「うん。今度…お祭り行かね?みんなで」



「お祭り…いいね!」




私はふふふっと微笑んだ。






< 66 / 338 >

この作品をシェア

pagetop