夏の匂い、冬の空気
「お前、何て言うか、あんまり人を近付けなさそうな感じだからみんな陰からお前の事想ってんじゃねーの?」
「そうですか…」

無駄な事なのに。
私に自由な恋愛なんて出来るわけない。
2つ並んだ影に目を落としながら思った。
どうせまた家が邪魔をする…。

「あっ、もう暗くなってきたし送ろうか?立ち話で悪かったな…」

「いえ、この近くなのでお構い無く…」そう言って私は逃げるようにその場を去った。

家に着くと母のいつもの決まり文句。
「春菜ちゃん、遅いわよ。」「すみません」と言いながら自分の部屋に避難。

階段下から「テストどうだったー?」と聞こえるが無視。

そんな事より北川先輩と初めて2人きりで話した事を思い出し、また胸が苦しくなった。
あの笑顔を見て、泣きそうになるのはどうしてだろう…。
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