夏の匂い、冬の空気
振り返ると、そこにいたのは長島明だった。
明らかに態度が悪そうな男。自信に満ち溢れてて、プライドが高そうな奴。自分の父親と被る。

「何?」

「そんな怖い顔しないでよ、今日の授業でよく分からない所があって…」

学年首位がよく言うわ。手元には数学の教科書と筆箱。何を企んでるんだか…

「先生に聞いたら?」と冷たくあしらい、武道場へ行こうとしたら、物凄い力で腕を引っ張られた。

「何するのよ!!」
そう言っている間も腕はつかまれたままだ。

「井田さん…君、もしかしてわざと満点取らなかったんじゃない?」

顔が近い。目が心まで見透かされている様だ。
何も言えない、動けない…怖い…。段々と呼吸が荒くなってくる。
苦しい…誰か…助けて…

そう思った瞬間、北川先輩の声が聞こえたような気がした。
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