夏の匂い、冬の空気
小さい頃の私が父に叩かれている。それをただ立って見ているだけの今の私。いつもの夢…

「井田!!」

大きな声に驚いて目を覚ました。保健室だ…
心配そうに私を覗き込む北川先輩と真理子。
保健室の角には長島明。

「気を失ったって聞いて飛んできたの。」真理子は今にも泣きそうだ。

「大丈夫、ちょっと寝不足だっただけ…」
違う。あれは発作だ。高校に入ってからはなかったのに。

「監督には言っとくから、今日は休めよ。」そう言って北川先輩は保健室を出て行った。

「あの人、春菜の先輩でしょ!?春菜をここまで運んできてくれたんだよ!!誰かさんのせいでね」と言いながら長島を睨み付ける真理子。

「俺は何もしてないよ、ただ数学で分からないことがあってさ」とさらりと言った。

「真理子、今日は約束(という名の合コン)があるんじゃなかった?私は大丈夫だから。あと、親には…」と言いかけて「大丈夫だよ春菜。」と言って笑った。
そして耳元で「今日から長島明は私たちの敵だね」と言って保健室を去った。

何て変わり身の早い…いや、親友を大切にしてくれる子なんだろう。と思いながら1人でふふっと笑った。
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