僕たちの時間(とき)
「光流……」

 堪え切れずに、僕は口を開く。

「どうしたんだよ。何か変だぞ今日。なに考えてるんだよ?」

 そう言った僕をじっと見つめて、ボソッと一言、光流は言った。

「おまえのこと…以外に、何かあるか……?」

「…………!」

 ――殺し文句だ。何も、言えない……。

 それに何となく、それが解ってもいたから……。

 なぜなら今日は“あの日”以来の光流との再会なのだ。

 多少は何か言われるだろうと、思ってはいた。

 満月さんから聞いたとかして、光流はもう、“全て”を知っていることだろう。

 僕と水月のことも……あの時の僕の様子から察し、わかってしまったに違いない。

「やっぱりおまえ、この間ここに来てたんだってな? 次の日の練習に来なかったの、二日酔いだろう?」

「ごめん、練習休んで……」

「いいさ、たまには目ェつぶってやるよ。――あの時……おやじさんに話すつもりで、ここに来たのか……?」

「おまえって何でもわかってるんだな……あぁ、そうだよ……でも、話せなかった……」

「今日来て、でも、おやじさんのとこに顔も出そうとしなかったけど……」

「今日になっても話せそうになかったから……顔、合わせづらくて……」

「そうか……」

「でもおまえのことだから、うまく話しといてくれたんだろ? ありがとな、助かる……」

「いや……」

 しかし光流は首を横に振った。

「俺がその話する前に、おやじさんから聞かされた話があって……俺、ビックリして何も言えなくなってさ……」

「え……?」

「聡のコンディション次第な話だから、おやじさんにはおまえの事情(コト)、聞いておいてもらうべきだったかもしれないけど……何となく言いそびれて……」

「そんな、光流が驚くような話って……!?」

「――テメエ……人をバケモノみたいに……」

「その通りじゃん! …てゆーか、それはともかく。そんな話にオレが関わってんの? 一体、何の話で……」

「まだ話せない、それは。おまえのコンディション次第の話だって、今言っただろ? どん底まで落ち込んでるような今のおまえには、到底、言えることじゃないからな」

「…………」
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