僕たちの時間(とき)
 気にはなるけど……光流の言い分が当たっているだけに、僕にはそれ以上のことは聞けず、黙った。

 早く立ち直るべきだと、頭で解ってはいても……未だ、僕は宙ぶらりん状態だ。

 こんな自分が、光流にいらぬ心配をかけてしまっていると充分にわかっているから……だから僕は何も言えない。

「全く、情けないよな……オレいつも、おまえに迷惑ばかりかけてる……」

「そんなん、かけたウチに入るかってーの! 何でも言いたいことは言っとけよ。それでも“迷惑”の“め”くらいなモンだろうしな」

「そう言ってもらえるとありがたいね。――おまえに話したくて……でも、迷ってたこともあるから……」

 ――そう…、僕は光流に話したかった。

 僕は大丈夫だと、早く安心させたかった。

 でも言えずにいたのは……迷いのせいなんかじゃない。

“軽蔑”されるのが怖かったから…だと、思う……。

 誰よりも、僕と水月のことをわかってくれていた、光流だから……。

 ――意を決して、僕は告げた。

「光流、オレは……」

「ん?」

「オレはもう、水月のことは忘れるべきなのかもしれない……」

「え…?」

「水月がそれを望むのなら、応えなくてはならないんだと思った……それに、遥の気持ちにも……」

「聡、おまえ何を……!?」

「光流、オレは……!」

 ――唇を、噛み締める。


「オレ……遥と、つきあってみようと思ってるんだ……」
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