僕たちの時間(とき)
 ――今日の練習で、自分がこんなにも不調になるなんて……全く、思ってもみなかった……。


『水月ちゃん、この頃来ないんだな……』


 こんな何気ないケンの一言に、あんなにも動揺してしまうなんて……!

 僕も自分が信じられなかった。


『あいつまだ、入院してるんだ……』


 どんな声で、どんな表情をしてそう言ったのかも、もう覚えていない。

 …というよりは、最初からわからなかった。

 仲間内の気心で、余計な詮索をしてくれなかったことは、何よりも救いになったけれど……僕の心が穏やかになることは、もう、無かった。

 たったあれだけのことなのに、どうしてこんなに……!

 思えば思うほど、唄えば唄うほど。

 ――足掻くほどにどんどん崩れていった、僕の唄。

 自分でもハッキリわかるほどに、中身(こころ)を失くしていって……―――。
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