僕たちの時間(とき)
「――自分でも、もうわかっているんでしょう……?」

「えッ……?」

「それは……決して1番にはなれない“好き”のカタチね……」

「それ、はっ……!」

「私はっ! ――私を一番に好きになってくれない男なんて……嫌いよッ………!!」

「遥……」

「手、放して。もう私なんか放っておいて。さっさと自分の“1番”のもとへでも行っちゃいなさいよッ……!」

 言われた通りに、僕は手を放した。

 遥の気持ちが痛いほどにわかって、とても苦しく……そして、とても嬉しくて。

 だが、僕は首を横に振った。

「オレは……水月のところには戻れない……」

「え…!?」

「聡!?」

 遥と光流、2人が同時に僕を振り返った。

 驚いたように、僕を見つめている。

 しかし僕は、もう1度しっかりと首を振った。

「光流にも、遥にも、いろんな人に助けられてて、守られて……そして迷惑かけて、傷つけて……。――こんなオレに、水月のところへ戻れる資格なんて無い。それに、こんな子供(ガキ)のままのオレじゃあ、水月に合わせる顔も、ない……」

「バカ、聡! 何この期に及んで意地張って……!」

「違う、光流。意地なんかじゃなくて……水月が望んだことだから……オレと別れることを望んだのは水月で……だから、水月が望むなら、オレはその通りにする……それしか、オレがしてやれることは無いから……」

「なッ…!? だからおまえはバカだって……!」

「――サトシ!」

 何か言いかけた光流を遮り、遥が僕の名を呼んだ。

 どことなく厳しい声音で。

「それでいいの? サトシは」

 ドクッ…! 心臓が高鳴る。

 何かが僕の心を抉った。
< 116 / 281 >

この作品をシェア

pagetop