僕たちの時間(とき)
「サトシは、それで幸せなの?」

「え……?」

 遥の言葉が僕を戸惑わせる。

「何、言って……」

「それは、サトシ自身が幸せになれる方法なのかって、訊いてんのよ!!」

「――――!」

 不意を突かれ、僕は黙り込んだ。

 何と言えばいいのかわからなかった。

 ただ遥の顔を見つめ、そして何か言葉を探そうとした。

「それは……」

「“彼女が幸せなら自分も幸せ”なんていう、とち狂ったこと言わないでしょうね!?」

「…………」

「図星!? ――あんたって…、どーっしようもない、バカね!! 今さっき、自分のことガキだって言ったばかりでしょ!? だったらガキらしく、自分も幸せになりなさいよ!! 2人で幸せになれる方法、探しなさいよ!! それも出来ないくせに自分の欲望ガマンするなんて、100万年早いってーのよおたんこなすっ!!」

「…………」

 僕には何も言えない。

 遥の言いたいことは、わかるけど……、

「――でも、今更だ……」

 一度離れた人間が、一体どんな顔して彼女に会いに行けるというのだろう。

 再び拒絶されるだけに、決まってる……!

「いいじゃない、ガキなんだから」

 しかし遥は、いとも簡単に、そう、宣って下さる。

「サトシは自分を悔いたわ。そしてちゃんと自分の帰る場所がわかった。それでいいんじゃない? それ以上、大人のフリをすることないわ。戻ってやりなおせばいい。それは子供だから出来ることでしょ?」

「わかってる……わかってるさ!!」

 本当に…! どんな壁があっても、どんな障害があっても、ただ素直に真っ直ぐに好きなものにぶつかっていく、あの情熱。

 子供にしか持ち得ないそれが必要なんだってことは、わかっている。

 でも僕は、一度それを捨ててしまった……。
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