僕たちの時間(とき)
 僕達は、あの桜の中で始まった。

 あれから色々なことがあったっけ。

 日曜日のデート、真夜中の電話、学校帰りの待ち合わせ、そして……忘れられない、僕達のファーストキスの思い出。

 去年の秋、2人で出かけた海で。

 2人並んで浜辺に座って、沈んでゆく夕日を眺めていた。

 君は僕の肩にもたれていたっけ。

 ――あの日、桜を眺めた時のように。

 陽が沈み、月明りの中で、初めてのキスを交わした。

 2人とも照れて赤くなって、どちらからともなく笑いだして、結局ムードなんて全くなくなってしまったけど。

 僕の小さな幸せ1つ1つの中には、いつでも、どんな時でも、水月がいた。

 いつも水月が笑っていた。

 哀しみに振り回されてそれに気がつかなかった僕は、なんてバカだったんだろう。

 大切なものを、自分から手放そうとしていたんだから。

 自分の心をしっかり見つめていたら、気付くこともできたはずなのに……。

(誰も傷つけずに、済んだかもしれないのに……)
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