僕たちの時間(とき)
  一緒にあたためてきた

  優しい思い出たちを

  飾るだけの宝石にはしたくない

  大切な2人だけの

  Dear Sweet Memories

  永遠(とわ)に輝かせていこう

  僕ら2人の心の中に

  たった1つの宝石箱に入るのは

  この愛、1つだけさ……






 唄い終えた僕の耳に、歓声が響いた。

 ここからはしばらく、長く間奏が続く。

「みんな、ありがとうっ……!」

 そう始まった僕のセリフは、しかしそこで途切れた。


『聡くん!』


 水月の僕を呼ぶ声が、確かに聞こえたような気がしたから……。

(どこで……?)


「聡くんっ!!」


 2度目は空耳じゃない。

 今度こそ、僕は声の聞こえた方へ目を向ける。

「水月……!」

 いつの間にか最前列まで来ていた水月が、ステージの真正面から僕を見つめていた。

 その瞳と頬は、涙で濡れている。

「ごめんね、聡くんっ…! ごめんなさいっ……!!」

 泣きながら、同じセリフを繰り返す。

「私、聡くんのそばにいたい! 一緒に幸せになりたい! もぉ、離れるのはイヤ!!」

「水月……」

「私も聡くんじゃなきゃダメなの!! 聡くんが好きなの!!」
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