僕たちの時間(とき)



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『私……奇蹟を信じてみることにしたの……』


『あなたがキレイだって言ってくれた、この瞳(め)だけは残したい……』


『怖いのよ! 怖くてしかたないの! ホントは死にたくなんて、ないのよっ……!!』


『この瞳がガン細胞に犯されないでいられることが、もう既に奇蹟だと思わない?』


『――もう生きてなんていたくないよ……。どうしてまだ私はここにいるのかな……』


『形が変わっても、想いはきっと変わらないわ……』


『淋しいの…、1人でいたくないの……! ――傍にいて……お願い……!』


『私、決めたわ! アイバンクに入る』


『私が死んでも、私は生きるの。あなたを愛している想いと一緒に、誰かの瞳(め)となって生きてゆくの。――それはとても素敵なことよ?』


『私なんて、どうなってもいいのよ……!』


『あなたを見つめてる“天使”は、すぐ傍にいるのよ?』


『私はあなただけのものだけど……あなたは決して私だけの人ではないんだわ……』


『あなたが誰かを愛して、誰かに愛されて、満ち足りた幸福の時間(とき)を過ごすのを、ずっとずっと見守ってゆくの……』


『私のほかに誰も愛さないでって、頼んだらその通りにしてくれるの……?』


『もう一度…、あなたに恋、するわ』


『悲しまないで、私はすごく幸せなの。あなたのおかげね。――私もあなたの幸せになることが、できたのかしら……?』


『私達の日々は嘘じゃなかったよね? ――よかった……ほんとうの、キレイな思い出に包まれて、私は生きてゆけるのね……』


『忘れないで。私はいつもそばにいるわ。いつもあなたを見つめてるわ。だから哀しみを抱え込んだりしないでね。私の好きなのは、笑顔のあなた、なんだから……』



『――バイバイ、私の天使……また、会おうね……』




『―――バイバイ………』








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