僕たちの時間(とき)
(あの幻は、一体何だったんだろう……? 何でここの景色が……? それに、あの男の子は、誰……?)

 そんなことを考えていると、誰かが歩いてくる気配がした。

 下草を踏み分けてくる足音が、だんだんと近づいてくる。

(誰……?)

 立ち上がったその時、突然強い風が吹き渡り、思わず私は目を閉じる。

 そしてまた、おそるおそる目を開くと……、


(――同じ…!? あの景色と、同じ……!!)


 辺りを覆う桜の花びらのピンク色……歩み寄ってくる、背の高い人影……。

(これは、夢……?)

 だんだん、こっちに近づいてくる。

(お願い、消えないで―――!!)


 …気がついてみると。

 私の前には、大学生くらいの男の人が1人、驚いたような表情をして立っていた。

 私達は無言で見つめ合う。

 その瞬間、パズルの最後のピースがカシッとはまったような……まさにそんな感じを覚えていた。

 初めて会う人なのに、すごく懐かしくて……瞼の奥が、熱くなる……!


(これは“デ・ジャ・ヴュ”……?)
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