僕たちの時間(とき)
*
ちょうど土手をあがった僕に飛び付いてきたのは、案の定、睦月ちゃんだった。
「聡さん、やっぱり私の卒業式、来てくれなかったのね! 待ってたのに、いくら待っても来ないんだもん! 1人で淋しくトボトボここまで帰ってきちゃったじゃない!」
「ごめんごめん」
可愛くふくらんだほっぺたを、むにっとつまんで僕は謝る。
「もぉ、すぐ子供扱いするんだからーっ……!」
ボヤいた彼女は、だがそのあたたかな手で僕の手を優しく包み込むと、少し大人びた笑顔で言った。
「――みぃちゃんのところに、行ってきたの……?」
僕はそっと、彼女の頭を引きよせる。
――返事はそれで充分だった。
「水月に、逢ったよ……」
睦月ちゃんのふうわりとした髪を撫で、僕は彼女の耳にささやく。
「水月は生きてる……ちゃんと“生きて”るんだ……!」
忘れかけていた、水月が教えてくれた“真実(こと)”。
“彼女”が、僕に思い出させてくれた。
“僕達”は、再び新しい1歩を踏み出せる。
今日“彼女”に出逢えたことを、僕は決して忘れはしないだろう。
――僕の“天使”は、もう僕の傍にいること……。
もう一度、僕は土手の桜並木を振り返る。
(思い出を振り返るのは…、――もう、これで最後だ……)
睦月ちゃんの華奢な肩を抱き、そして僕達は共に歩き出す。
きっと……“ここ”は、これからも変わることはないのだろう。幼かった“かつての僕”は、この場所に置いていこう。
もう振り返ることはない。
僕はこれから、水月と描いた“夢”を、僕の“天使”と共に歩んでゆくのだから……―――。
そうしてまた、新しい時間(とき)が、始まる……―――。
-『僕たちの時間【とき】』 fin.-
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番外編『君が通り過ぎた季節に…。』
ちょうど土手をあがった僕に飛び付いてきたのは、案の定、睦月ちゃんだった。
「聡さん、やっぱり私の卒業式、来てくれなかったのね! 待ってたのに、いくら待っても来ないんだもん! 1人で淋しくトボトボここまで帰ってきちゃったじゃない!」
「ごめんごめん」
可愛くふくらんだほっぺたを、むにっとつまんで僕は謝る。
「もぉ、すぐ子供扱いするんだからーっ……!」
ボヤいた彼女は、だがそのあたたかな手で僕の手を優しく包み込むと、少し大人びた笑顔で言った。
「――みぃちゃんのところに、行ってきたの……?」
僕はそっと、彼女の頭を引きよせる。
――返事はそれで充分だった。
「水月に、逢ったよ……」
睦月ちゃんのふうわりとした髪を撫で、僕は彼女の耳にささやく。
「水月は生きてる……ちゃんと“生きて”るんだ……!」
忘れかけていた、水月が教えてくれた“真実(こと)”。
“彼女”が、僕に思い出させてくれた。
“僕達”は、再び新しい1歩を踏み出せる。
今日“彼女”に出逢えたことを、僕は決して忘れはしないだろう。
――僕の“天使”は、もう僕の傍にいること……。
もう一度、僕は土手の桜並木を振り返る。
(思い出を振り返るのは…、――もう、これで最後だ……)
睦月ちゃんの華奢な肩を抱き、そして僕達は共に歩き出す。
きっと……“ここ”は、これからも変わることはないのだろう。幼かった“かつての僕”は、この場所に置いていこう。
もう振り返ることはない。
僕はこれから、水月と描いた“夢”を、僕の“天使”と共に歩んでゆくのだから……―――。
そうしてまた、新しい時間(とき)が、始まる……―――。
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