僕たちの時間(とき)
「本来、咲くはずではなかった季節(とき)に、人間の“需要”なんていうエゴのためだけに咲くことを強要されて。…考えると切ない存在よね。だからこそ、愛さずにはいられないわ。既に咲いて切られてしまった花には、水をあげて愛情をかけて、少しでも長くその綺麗な姿を留めてあげることくらいしか、人にはしてあげられることが他に無いから……」

 切なげな視線で花たちを見つめ淡々と語るその水月の姿に、何故だろう、ハッと胸を突かれた。

 ひょっとしたら彼女は、その“季節外れに咲いた花々”に自分を重ね合わせているのではないだろうか…?

 そんなことを考えてしまったからかもしれない。

 既に咲いて切られてしまった“花”―――タイムリミットを迎えようとする“命”。

「枯れない花だったら、良かった……?」

 思わずそう問いかけてしまった僕を静かに振り返り、そして彼女は微笑んだ。

「いいえ。いつか枯れてしまうからこそ、咲いている花が美しいのよ」
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