僕たちの時間(とき)
驚いて、思わず僕はまじまじと彼女を見つめてしまった。
「よくわかったなあ、この花だって……」
「だって、私もこの花、大好きなんだもの。もうホトンド直感的に“もしかしたら…”って思って。でもまさか聡くんに、大好きな花を『似合う』って言ってもらえるなんて思わなかったから、本当に嬉しい!」
そう即答して、本当に嬉しそうな表情で彼女は笑う。
「花そのものも、可憐で愛らしくて、大好きなんだけどね。…この花って、6月に縁(ゆかり)のある花、なんですって。私も6月生まれでしょう? 何となく“誕生花”のようにも思えちゃって、愛着があって」
「へえ? その花、水月とそんな縁(えん)がある花だったんだ」
本当にその花が好きなのだろう。笑顔で饒舌に語る彼女の姿は、普段あまり自分を出すことも無く控え目で落ち着いている彼女とは違って珍しくて、見ていてとても可愛らしかった。
その様子は、まるで自分の好きなものを褒められて純粋に喜んでいる無邪気な幼い子供みたいで。
すごく微笑ましくなって、思わず僕の顔にも笑みが広がってくる。
「あとね、花言葉も素敵なの。『清らかな心』っていうのよ」
「それはそれは…すごく水月サンにピッタリの花言葉で。よかったですネ」
そこで僕の苦笑混じりの笑顔に気が付いたらしい。
彼女はフと我に返ったように笑顔を引っ込め、ちろりと、軽く上目遣いで僕を睨んだ。
「ホントにそう思ってるぅ?」
「もちろん。この花ってバ、いつまでも可愛くて清らかで純真な水月には、ホント似合いの花だよなあ…と、心の底から思ってるよ?」
その即答で、あからさまに彼女の視線が上目遣いから半眼に変わる。
「――そこまで言われちゃうとイヤミにしか聞こえないんだけど……?」
「心外だなあ。オレがホントに一生懸命考えて、水月に似合うって思って選んだ花なのに」
「…………」
一呼吸分の沈黙。――だが、その後。
「まあ、嬉しいわ」
正に不意打ちのようなタイミングで、水月はにっこりとした笑みを作った。
――繰り返しておこう。
笑みを“浮かべた”のではなく“作った”のだ。
「よくわかったなあ、この花だって……」
「だって、私もこの花、大好きなんだもの。もうホトンド直感的に“もしかしたら…”って思って。でもまさか聡くんに、大好きな花を『似合う』って言ってもらえるなんて思わなかったから、本当に嬉しい!」
そう即答して、本当に嬉しそうな表情で彼女は笑う。
「花そのものも、可憐で愛らしくて、大好きなんだけどね。…この花って、6月に縁(ゆかり)のある花、なんですって。私も6月生まれでしょう? 何となく“誕生花”のようにも思えちゃって、愛着があって」
「へえ? その花、水月とそんな縁(えん)がある花だったんだ」
本当にその花が好きなのだろう。笑顔で饒舌に語る彼女の姿は、普段あまり自分を出すことも無く控え目で落ち着いている彼女とは違って珍しくて、見ていてとても可愛らしかった。
その様子は、まるで自分の好きなものを褒められて純粋に喜んでいる無邪気な幼い子供みたいで。
すごく微笑ましくなって、思わず僕の顔にも笑みが広がってくる。
「あとね、花言葉も素敵なの。『清らかな心』っていうのよ」
「それはそれは…すごく水月サンにピッタリの花言葉で。よかったですネ」
そこで僕の苦笑混じりの笑顔に気が付いたらしい。
彼女はフと我に返ったように笑顔を引っ込め、ちろりと、軽く上目遣いで僕を睨んだ。
「ホントにそう思ってるぅ?」
「もちろん。この花ってバ、いつまでも可愛くて清らかで純真な水月には、ホント似合いの花だよなあ…と、心の底から思ってるよ?」
その即答で、あからさまに彼女の視線が上目遣いから半眼に変わる。
「――そこまで言われちゃうとイヤミにしか聞こえないんだけど……?」
「心外だなあ。オレがホントに一生懸命考えて、水月に似合うって思って選んだ花なのに」
「…………」
一呼吸分の沈黙。――だが、その後。
「まあ、嬉しいわ」
正に不意打ちのようなタイミングで、水月はにっこりとした笑みを作った。
――繰り返しておこう。
笑みを“浮かべた”のではなく“作った”のだ。