僕たちの時間(とき)
 強くなりきれない僕。

 強くなりきれない水月。

 弱さを心に隠したまま、強いフリを続けているだけの、僕たち2人―――。

『そんなに強くはなれないよ……』

 全てを受け入れられるようになってさえ、そう言って彼女は僕の胸で泣いた。

『怖いのよ! 怖くてしかたないの! ホントは死にたくなんて、ないのよっ……!!』

 吐き出すように叫んだその声が、まだ耳から離れない。

『聡くんが居るから、私、どんどん弱くなる。――でも、聡くんが居てくれなきゃ、強くなれない……!』

 強くあろうとするがゆえに、心に生まれ出ずる弱さ。

 そこに生じる、終わりの無い葛藤。

 しかし時間(とき)は、“終わり”を連れてやってくる。確実に。

 ――その訪れは……もう間もなく。

 残された時間の中、隠しきれない互いの弱さを繰り返し繰り返し曝け出し合いながら、それでも強いフリをして笑っているしか……、

 ――術(すべ)が無かったのだ。僕たちには……。
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