僕たちの時間(とき)
 その花の名前が『カスミソウ』というのだと……それを僕が知ったのは、ずいぶん後になってからだった。


 好きだと言ったその花の名の通りの…彼女はカスミソウのようなひとだった。

 美しく可憐で清らかで、決して人の前に出ることもなく控えめな…でも清冽な強さを秘めていた、

 ――そして、霞のように儚くその命を散らしてしまったひと。

 そして僕が、初めて愛した女性(ひと)………。


 僕は唄う。

 カスミソウの花の向こうに彼女の面影を求めて。

 僕は哭(な)く。

 その叫びを歌に乗せて。


 咲き誇る桜でピンク色に染まった季節に逝った、君の亡骸(おもいで)に縋りながら。

 両手に溢れるカスミソウの花を抱きしめて。


 ―――涙を見せずに、僕は泣いた。










-『刹那の花命、永遠の花影』 fin.-


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番外編『crescent~真冬の月~』
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