僕たちの時間(とき)
「―――もう、見てらんないの……!!」


 俺の胸に突然縋り付いてきた満月(まつき)は、消え入りそうな声で弱々しく、それを、呟いた。

 驚くでもなく、何の言葉をかけるでもなく……ただ黙って、俺はそんな彼女を受け止める。


 ―――俺に、何が言えると言うのだろう………。


 彼女が、こうして俺に胸中を吐露せざるを得なくなるような“現実”を、知っているから……だから黙したまま彼女を抱きしめていることしか、俺には、出来なかった。

“事情”に通じているとはいえ……あくまでも“第三者”で“傍観者”の立場である、俺には……―――。
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