僕たちの時間(とき)
『水月……あと半年の命、なんですって……』


 藤沢の姉である満月の口から、その事実を聞かされた時は……愕然として俺は、その場に立っていられなくなるくらいの…まるで後頭部を鈍器で力一杯殴り付けられたような衝撃を受け、絶句した。

 聡が、再び涙を流すことができるようになったと……いつの間にか、藤沢のお陰でそこまで“傷”は癒されていたのだと……昔の聡に戻りつつあるのだと……それを喜ぶ気持ちさえ、その小さなカケラすらも粉々に打ち砕かれてしまうほどの、あまりにも大き過ぎる衝撃だった。それは。

 ―――せっかく癒されたはずの聡の“傷”が……また、めりめりと音を立てて、開いていく……!!

(こんなの……これじゃ、〈元の木阿弥〉じゃないか……!!)

 何故、聡ばかりがこんな目に遭わなくてはならないというのか、こんな想いを味わわなくてはならないというのか……―――。


 ―――それがヤツの“運命”だと云うのなら……俺は本気で、それを、呪った。
< 186 / 281 >

この作品をシェア

pagetop