僕たちの時間(とき)
 酒を飲むことにはソコソコ慣れてはいるものの、でも実はそこまで酒に強くはない、そしてそれほど酒好きでもない、そんな満月は。

 自分から『飲みに行こう』と言い出すことなど滅多に無い。

“飲む”より“食べる”方が大好きだと公言して憚らない彼女ゆえに、大抵は『ゴハン食べに行こう』か、俺の部屋に来る時は『何か作って』と――世間一般的に“逆”だよなーと、常々思うが――食材を買い込んでくる。

 そんな満月が、自分から酒を飲む時は……―――何か、よっぽどのモノを自身の中に抱え込んでいるからに、他ならない。

 今までの俺の多くも無い経験上、彼女のそれは大抵、よっぽど“腹に据えかねること”を抱え込んだ時がホトンドだった。

 酔いの勢いを借りて、言えなかったこと、言いたかったこと、そして文句だとか悪口だとか愚痴だとかを何だかんだと、とにかく腹に溜め込んでしまったもの全てをブチまけようとするのだ。

 そうして潰れても、翌朝は『ああスッキリした』と、ケロッとしたカオで笑っている。

 二日酔いでズキズキ重い頭を抱えながら。
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