僕たちの時間(とき)
 満月の言う通りだ。

“無理”をしなくては、近く確実な“死”を目前にして、ああも穏やかでは居られないだろう。

 だが、それは、彼らの中で“無理”が“無理でないもの”になっているだけのことだ。

“あって当然のもの”として彼らの中に在る、というだけなのだろう。

 ―――だからこそ、2人は弱くもあり脆くもあり……そして強く美しくさえ、在ることができる………。


「いつも心の中で叫んでたの。――『もういいよ』って。『もうやめていいよ』って。『もう無理するのやめなよ』って……!! 叫びたくて、たまらなかった……!!」


 ―――それは“禁句”だ。

 満月に対してだけじゃない。

 俺にだって…彼ら2人を良く知る者すべてに対し、無言のうちに科せられている、

 ―――いわば、犯してはならない禁忌(タブー)。
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