僕たちの時間(とき)
 俺の胸に縋りつく満月の肩が、やおら細かく震え始める。

 そして、とうとう、むせ返るように泣き出した。

 そんな彼女を抱きしめながら……窓の外の月を仰ぐ。

 ―――黒く蒼い夜空に映えて、白く皓々と冴え渡る……まるで鈎(かぎ)のように細く尖った三日月を。


 ―――欠けてゆく月なら、また満ちることができるけれど………。


 俺は、消えゆく“月”に想いを馳せる。

 抱きしめた腕の中の彼女が、泣き疲れて健やかに寝息を立て始めるまで……ずっと、そのまま、窓の外を見つめていた。


 ―――消えてしまったら、もう再び満ちることのない“月”は……一体、どこへいくのだろうか………?
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