僕たちの時間(とき)
「君、2組の竹内くん…だよね?」

 ふいに自分へと話を振られて、「はい…!?」と、慌てて僕は椅子から立ち上がる。

「そうだけど……僕に、何の用?」

「あれ? 君、ケンから何も聞いてないの?」

「『何も』って…、――何を……?」

「ケーンー……?」

 途端、僕と生徒会長、ついでに渡辺クン、3人分の白い視線が、戸口でヘタり込んだままの葉山へと一斉に集中する。

 にも拘らず、「うん、言ってねえ」と、ヤツは悪びれもせずシレっと言ってのけた。

 …だから、何だっていうんだ一体?

「まあ、いいじゃねーか。そんな細かいことは」

「『細かいこと』じゃねーだろうが! だいたいオマエは、いつもいつもッ……!」

「あーはいはい、わーったわーった! じゃあ、いま言えばいいだろ?」

 立ち上がりながら、何事か文句でも言いたげな会長へ手を翳しつつ、無理矢理その言葉を遮って。

 そして葉山は、そのまま振り返って「竹内」と、おもむろに僕を呼んだ。

「つーワケで。――オマエ、ウチのキーボードに決定な?」

「はいっ……!?」

 ――正真正銘、まさに言葉通り、言われたことの意味が分からないんですけれども……?

 キョトンと目を瞠って見上げた僕の視線を、真っ向からニヤリと見つめ返して。

 まるで悪巧みをする子供のように、それを葉山は、楽しげに、言った。


「俺たち“4人”でバンド組むことになったから。つーワケで、オマエがウチのキーボード担当。――OK?」


 ――そんなもん……どー考えたって『OK』と言えるハズもないだろうがよ?
< 225 / 281 >

この作品をシェア

pagetop