僕たちの時間(とき)




『俺たち“4人”でバンド組むことになったから。つーワケで、オマエがウチのキーボード担当。――OK?』


 これだけは断じて言っておくが。

 僕は、そのヤツの申し出に『YES』と応えた覚えは、決して無い。

 ましてや、『OK』と言った覚えだって、全くもって、それこそ無い。

 なのに葉山は…いやヤツだけじゃない、今や山崎くんや渡辺くんまで、僕を『キーボード担当』と認識してしまっているようなフシがあり。

 …全くもって、本当に迷惑な話だ。

 しかも、更に迷惑きわまりないことに……件の宣言を受けた翌日から早速、毎日入れ替わり立ち代わり、放課後を待たずにヤツら3人が僕のもとへと訪れてくるようになったのだ。

 3人のうち、

 …1人は校内随一の問題児。

 …1人は生徒会長。

 …1人は女子の人気を総ナメにしてるよーな色男。

 ――これが目立たないワケがない。

 おかげで、見ず知らずの“知り合い”が増えてしまった。

 なにが悲しくて、今までヒトコトも言葉を交わしたことのないクラスメイトから、あいつら3人との関わり合いについて根堀り葉堀り聞かれるだけどころか、

『バンド頑張ってね』と――既に他の関係ない一般生徒にまで間違った事情がシッカリ知れ渡ってるのも一体どういうワケなのか――励まされたり、

 挙句の果てには、『渡辺くんって好きなコいるの?』などといった恋愛相談に至るまで押し付けられなければならないのだろうか。

 …つくづく考えるだに、全くもって理不尽な話だ。


 ――それもこれもどれもあれも……考えるまでもなく、全てはあの葉山の所為でしか無い。
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