僕たちの時間(とき)
 僕に貸してくれるものについての各々の語りや、音楽そのものを聴いているうちに、葉山、山崎、渡辺の3人が好む音楽の“系統”の違いが、なんとなく分かるようになってきたのだ。


 渡辺くんは、“正統派”…とでも云うべきか? な、60年代ロックンロールな音楽を、わりと好んで聴いている。

 本人曰く『やっぱり《ビートルズ》が“原点”ってカンジがするし』と、LPからカセットに落としたものをゴソッと持ってきてくれた。

 やはり彼曰く『両親のコレクション』とやらで、家にはそういう系統のLPばっかり勢揃いしているんだそうだ。

 小さい頃から、そういった音楽を聴いて育ってきたらしい。

 それに対して葉山は、逆に“正統派”とやらじゃない系統のロックを好む。

 自分でも『俺はパンクが一番好きだ!』と言ってるし。

 たぶん洋楽の、ワケわからないバンド名のCDをゴッソリと持ってくるのがコイツだ。

 お兄さんがロックバンドをやってる影響、とかで、やっぱり小さい頃からロックばかり聴いて育ってきたらしい。

 他には、無名のインディーズアーティストのCDとかも。

 …最初、『《インディーズ》っていうグループ名なの?』とか訊いてしまって大爆笑された覚えがある。

 そういった“ロック”というものにコダワリを持つ2人とは対照的に、

『良い音楽にコダワリは不要』と、ノージャンルで幅広く何でも聴くのが山崎くんだ。

 彼が僕に貸してくれる音楽は邦楽が多い。

 しかも“ロック”に限定せず、ポップスからジャズからアイドル音楽に至るまで、はたまた『今これ売れてるらしいんだよな』とか云うだけの理由のものまでも、

 いわゆる彼曰く『一般大衆受けする音楽』というものを、ゴチャッと僕に教えてくれた。


 つまり結論。

 コイツら3人、口では『バンド組む』だ何だ言ってるワリには……音楽の嗜好にしても、性格からしても、何もかもにおいて三人三様で、すっげえバラバラ! ということ。
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