僕たちの時間(とき)
「オレたちが一緒にバンド組むこと……ひょっとして竹内くんには、迷惑なことだった?」

 相変わらずの無愛想さで、でもどことなくおずおずとした風情で訊いてきた、そんな渡辺くんに。

 チロリと横目で“今さら改まって何を言いやがってんだコイツは?”とでも言いたいかの如く睨み付けるように見上げながら、呟くように「かなりね」と、僕は返してやった。

「君たちが入れ替わり立ち代わりCDやら何やらを押し付けてってくれるおかげで、僕のピアノの練習時間も減ってくれちゃったことだしねっ!」

 それを、あからさまなイヤミッ気たっぷりに言ってやったら、まるで条件反射のように、「ああ、ゴメン」と返ってはきたものの。

 続く言葉が、「そうだったんだ…」。――って、気付いてなかったのかよ!

「じゃあ負担にならないよう、今度からは一度に持ってこないで、少しずつにするから」

「…………」


 そういう問題じゃない! …と叫びたい気力が一気に脱力感に変わった瞬間を、今まさに、僕は、味わった―――。


 どうしてコイツには、“僕を仲間とは認めない”という選択肢が、そこで出てこないのだろうか。

 それが、どうしても不思議でならない。

 てゆーか、そもそも……、

「渡辺くんは……どうして今まで何の関わりすらなかった僕を、そうやって簡単にすぐ『バンド仲間』だなんて、認められるのさ……?」

 ――これに尽きる。

 なのに、それこそ“今さら何を言っているんだ?”とでも言いたいような表情で、キョトンと、さも当然のことのように、彼は答えたのだ。

「だって君はケンの友達なんだろ? ケンが『仲間だ』って言うなら、もう仲間じゃん」

 そんなことを、そんなにもアッサリ言われては……僕は絶句するしか出来ないではないか。

 だが、こんなことなどコイツにとっては、所詮“そんな理由”でしかないのだ。

 僕が葉山の『友達』だって……?

 そんなんじゃないのに……!
< 233 / 281 >

この作品をシェア

pagetop