僕たちの時間(とき)
 僕には想い描くことのできない……それは“未来”。

 その言葉に秘められたのは……力強い、無限の“可能性”。


「…信じられないか?」

 あまりの衝撃に、眩暈すら感じて絶句するしか出来ないでいた僕を。

 ふいにその言葉が現実に引きずり戻した。

 それは、相変わらずのニヤニヤ笑いを浮かべてこちらを見下ろす、葉山の言葉。

 途端、ムッとした僕は、ほとんど反射的に言い返していた。

「信じられるはずないだろう、そんな全くもって信憑性の無い話を! 吐くならもっとマシな嘘を吐いて欲しいな!」

 半眼で言い返してやると、さすがに葉山もムッとしたらしい。

 そこからはもう、〈売り言葉に買い言葉〉の応酬にしか、ならなかった。

「『嘘』じゃねえよ! 俺らには、そうなれるだけの実力があるから言ってんだ!」

「どっから来るの、その根拠の無い自信は?」

「知りもしねえクセに、否定ばっかりかテメエは!」

「そんなのアタリマエだろう!? じゃあ何? そしたら、その『そうなれるだけの実力』とやらを、証明できる手段でもあるワケ?」

「それは、まず聞けよだからっっ……!!」


「――なら、こういうのはどうかな?」


 僕と葉山の無駄で無意味な言葉の売り買いを、そこで遮るように挟まれたそれは。

 葉山の背後から意味ありげなニコニコ笑顔で顔を覗かせてきた生徒会長のものだった。

 それを目にして、僕の眉がクッと寄った。

 彼の笑顔は少し不愉快だ。

 自分がその掌で転がされてる駒になったような気分にさせられるから。

 先刻の僕の言葉をどこまで聞いていたのかは知らないけれど……それでも尚こうやって微笑んでいられる彼に、何かしら穏やかでないものも感じさせられる。

 そんな僕の様子に気付いてるのか気付いてないのか、…多分シッカリ気付いてて内心ほくそ笑んででもくれてやがるんだろうけど、

 さりげなく葉山との間に割り込むように立った山崎くんは、一見すると極めて穏やかな様子で、僕に、告げる。

 何の脈絡も無い、とても“意味不明”でしかない言葉を。


「そうだな……とりあえず“賭け”でも、してみようか」
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