僕たちの時間(とき)
「僕は“人間”じゃない…“人間”になっちゃいけないんだ……! ――“人間”である僕なんて、生きてたって何の意味も無いのにっっ……!!」


 吐き出すようにそれを叫んだ途端。

 ふいにガッと強い力で僕の二の腕が掴まれた。

 その力で、掴まれたと同時に全身が大きく揺れ、そのまま勢いで背中が椅子の背もたれに叩き付けられる。

 そして……、


 ――パンッ……!!


 突然、頬に重く熱い衝撃が走った―――。


 自分が頬を張られたのだと……気付くのに時間を要した。

 あまりにも突然のことで。

 そして、あまりにも驚いて。

 今しがたまで泣いていたことすらも忘れ果てて。

 しばらくの間、頬を張り飛ばされた状態のままで硬直していることしか出来なかった。


「――ふざけんな……!!」


 おもむろに頭の向こうから声が降ってきて。

 そこでようやっと、のろのろと僕は頭を持ち上げる。

 僕の腕を掴み、怒ったような眼差しで、近くから真っ直ぐに僕を見下ろしていたのは……、

 ――渡辺くん、だった。
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