僕たちの時間(とき)
 時間ちょうどに、僕達はスタジオに入った。

 建物の中はクーラーが効いていて、そこだけ別世界に来たようで気持ちいい。

 もう既にケンとトシは来ていて、チューニングも済ませていた。

「あれ? 水月ちゃんは一緒じゃないの?」

「後から。今日は学校へ行ってから来るんだってさ」

「ホント!? 嬉しいなあっ、水月ちゃんがいるのといないのとじゃ、ヤル気に全然差が出るからなーっ」

「あぁ、どうしてあの水月ちゃんが、この聡“なんか”の彼女なんだか……はふぅ……」

「毎度毎度、タメ息を吐くなっ!!」

 いつものことだから、こいつらに悪気がないことくらいわかってるけど……しかし、こう日に何度も似たようなことを言われちゃあ、いい加減頭にもくるってものだ。

「おら、そこ! ジャレてないでサッサとやろうぜ、時間なくなっちまう」
 元凶は涼しー顔してこんなこと言ってるし……。――いつか覚えてろよ……!

 でもまぁ、何はともあれ、ようやく練習らしい雰囲気になってきただろうか? 光流もダテにリーダー張っているわけではない。

「“あれ”、いこうか。出来たてのヤツ」

「あぁ、聡の力作!」

「マジ良かったぜー、あれならバッチシ!」

「サンキュ! みんなのアレンジのおかげデス」

《ウォーター・ムーン》ではだいたい、作詩が僕、作曲はトシ、編曲は皆で、というような役割に分かれている。

 ――因みに、光流とケンは、オールラウンドに何でもやる。

 けど今回、僕は珍しく――というより初めて――作曲にも手を出してみたのだ。

 その記念すべき僕の作詩作曲の作品は、もちろん水月への想いを込めたラブソング。

 今までも当然、詩に水月への想いを込めて書いていたけれど。

 今回は曲にも想いが込められているのだ。そう思うと感慨もひとしおってゆーもの。

 普段から命かけてチャラけてるようなケンとトシだって、曲に関しては何も言わない。

 真剣に、そしてちゃんと認めてくれる。

 これが僕達のケジメだ。

「じゃ、やろーか!!」

 ――息を吸い込む。


「『FOREVER…,WITH YOU』!」
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