僕たちの時間(とき)
「こんにちはー!」

 何曲か演奏し終わって、それぞれの曲の出来不出来や注意点などについてのミーティングをしていた時だった。

 ドアが開き、制服姿の水月がひょっこり顔を覗かせる。

 その腕にコンビニのビニール袋をぶらさげて。

「おーっ! 待ってたぜぇ、水月ちゃん」

「んじゃ、ここらで休憩にするか」

「ごめんなさい、今日はそんなにたくさんは用意できなかったんだけど……」

「いいって、いいって! いつもどーもな」

「お? おにぎりにサンドイッチまであるじゃん! ちょーど小腹が空いてたんだよ」

「俺なんて昼メシ抜きだったんだぜー。超ありがたいぜーっ!!」

 相変わらず、3人とも僕を押し退けて袋をガサガサやり始め。

(てめーら、なぁっ……!)

 いつもの如く出遅れた僕は、あきらめがカンジンとばかりに座り込む。

「はい、聡くん」

 大体そのパターンな為、水月はいつも僕の欲しいものを察しては持ってきてくれる。

 今も、差し出された手の中にはツナサンドとアクエリアス。

「おにぎりもあるけど、そっちがいい?」

「いや、こっちのがいい。サンキュ」

 水月は何でもわかっているんだな…と、いつもながら思う。

 すごいよな、何でわかるんだろう……?

「全く、おまえにはかなわないや」

 そんな僕の呟きを聞き止め、並んで椅子に腰掛けていた水月は、缶紅茶を飲む手を止めて、きょとんと僕を見上げた。

「何それ? どういうこと?」

「何でもない。…それよりも! おまえ、まーた早めに着いたくせに一段落するまで外で待ってたりとか、してないだろうな!? そんな気ィ遣う必要なんて無いんだからな!? 水月だったら、例え演奏途中だったとしても、誰も文句なんて言わねーんだから!」

 いつもそうなんだ。

 きっと今日だって、そうしていたに決まってる。
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