僕たちの時間(とき)
「あんな重そうな袋抱えて待ってるなんて、大変なんだからさ……」

 僕達の夢を誰よりも理解してくれているから……僕らの為なら、自分が苦しいことだってきっと我慢してしまうんだ水月は。

 そんな想いがありありと浮かんでいたであろう僕のカオを、まじまじと見つめて水月は。

 そして、にっこりと笑った。

「やっぱり、聡くんにはかなわないな!」


 その笑顔がやけに……いつもよりも儚く見えたような気がしたのは……、

 ――僕の気のせい、なのだろうか……?


「そういえば水月ちゃん、聞いてる?」

「え? なぁに?」

「聡が、水月ちゃんの歌を作ったってコト」

「「えッ!?」」

 ケンのその言葉に、僕も水月も同時に驚き、その上僕は、

(うぐっ……!!)

 間抜けなことに、食べていたサンドイッチを喉に詰まらせてしまっていた。

 しかし水月は、気付いてか気付かないでか、そんな僕を放ったらかしたままケンに問う。

「何それ、知らない! それホント!?」

「ホントホント! 聡の奴、初めて作曲までしちゃってさーっ」

「水月ちゃんへの想いがもぉ、じわぁ~っとにじみ出てるぜぇ」

(おッ…、“オレ達のケジメ”はどーしたッッ!!)

「それはゼヒ聴きたいなあっ! どんな曲?」

「譜面(スコア)、見る?」

「見る見るーっ!」

「だめっ!! ちょい待て、ストップ!!」

 ようやっと、喉のゴロゴロした塊を押し込んで僕は、皆の方へ歩みよろうとしていた水月の腕をぐっと掴み、引き止めた。

「何でー? 聡くんヒドい、私も聴きたいのにぃ……」

「だーめっ! ずぇったいに、ダメッ!!」

「さては…、私の悪口書いたなぁ?」

「違うだろっっ!!」

「じゃ、楽譜みるだけならいいじゃない」

「だめです!」

「どおしてぇーっ?」

「どうしてって、そんなんッ…! ――ラ、ライブの時に、聴かせてやるからさっ……!」

「えーっ……」

「――それくらいにしといてやれば? 聡、真っ赤になって困ってるぜ」
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