僕たちの時間(とき)
 まだ不満気な水月に向かい、光流がそう助け船を出してくれた。笑いながら。

 助かったけどっ…! 真っ赤は余計だ、真っ赤はっ!!

 ――実際、多少は赤かったと思うけどさ……。

「ちょっとくらい困ればいいのよ! そんな重大なこと、私に秘密にしてた罰としてっ」

「そう言うなって。まぁ、それはとてももっともなことだと思うけど……。――でーも聡の奴、出来上がったそれ見ながら嬉しそうに…本っ当ーに嬉しそうに、『これライブで水月に聴かせたいよなぁ…、やっぱそれまで秘密にしておくべきだよなぁ…』って、1人でブツブツ本っっ気で言ってたんだからさーっ」

「――なっ…!?」

 み、光流オマエっ! なに余計なことをッ!! …てゆーかそれ以前に!

 ナゼおまえがんなこと知ってるんだよッ!!

「そういう訳だからさっ、藤沢も聡のその気持ちをくんでやって、ライブ当日までは知らないフリを……」

「こ、のヤロぉッ…! いらんことベラベラ喋ってんじゃねーよ、このボケ!!」

 手元のギターでバカッと…殴るわけにもいかず、とりあえずまだ中身の入っているペットボトルで、光流の後ろ頭を思いっきりドつく。

「いってェ…! おまえ何もそんなモンで……」

「み、つ、る、くーん? そーゆうことは知ってても言わないものだよぉ? フツーはッ!!」

「わ…わかった、からっ……! 俺を殺すなってばよっ……!!」

 僕らのやりとりを、今サラながら少し赤くなって、水月は眺めていた。

 僕は光流を締めていた手を離し、そんな彼女の方へと身体を向き直し、つられたように顔を赤くしながら言った。

「て、ワケだから……ライブまで、待っててほしいんだけど……」
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