僕たちの時間(とき)
「――んでッ……!!」
声にならない声が洩れた。
僕はそのまま振り向き、光流の襟首を締め上げる。
「何で止めたんだよ! 何で水月と一緒に行かせてくれなかったんだよ! 光流!!」
「…………」
光流は、やめろとも放せとも言わなかった。
ただ何もせず、僕のなすがままにされていただけだった。
それがイラついた。
イラついて、無抵抗の光流をガシガシ揺さぶった。
「何でだよ! 何とか言ってみたらどうなんだよ! 何か言えよ、みつ……!!」
『る』、とまでは言えなかった。
光流はふいに顔を上げ、ギッとすごい目で僕を睨んだかと思うと、いきなり拳で僕の右頬をぶん殴ったのだ。
左利きである光流が左手で殴った……これは光流が本気であるのに違いなかった。
ギター弾きが利き手で殴るなんていう、ギターが弾けなくなるかもしれないような真似を、あろうことかこの光流がするなんて……!
つきあいの長い僕でも、初めて遭遇した出来事だった。
その本気のパンチをくらって、ぶっとんで激しく地面に叩きつけられて。
それでも僕は驚きのあまり何も言えず、何も考えられず、ボーッとただ光流を見上げることしかできなかった。
「ばかやろうっ!! いいかげん、正気に戻ったらどうなんだっ!!」
右頬がじくじくとした痛みを訴えはじめるや否や、降ってきた光流の怒鳴り声。
「いつまでカッカしてるつもりだよ、少しは落ち着けッ!!」
「光流……」
「一緒に行って何するんだよ!? おまえみたいに頭に血ィ上らせたバカが付いて行ったところで、迷惑にこそなっても、何の解決にもなりゃしねーんだよ! ただわめくだけしかできない奴が、何をどーにかできるってんだ! ――そりゃあ、おまえの彼女のことだ、心配するなって方が無理だってことくらい、解ってる。けど、わめく以外にも心配する方法はあるだろう? 付いて行くほかにも、おまえにできることはあるだろうが!?」
「…………」
声にならない声が洩れた。
僕はそのまま振り向き、光流の襟首を締め上げる。
「何で止めたんだよ! 何で水月と一緒に行かせてくれなかったんだよ! 光流!!」
「…………」
光流は、やめろとも放せとも言わなかった。
ただ何もせず、僕のなすがままにされていただけだった。
それがイラついた。
イラついて、無抵抗の光流をガシガシ揺さぶった。
「何でだよ! 何とか言ってみたらどうなんだよ! 何か言えよ、みつ……!!」
『る』、とまでは言えなかった。
光流はふいに顔を上げ、ギッとすごい目で僕を睨んだかと思うと、いきなり拳で僕の右頬をぶん殴ったのだ。
左利きである光流が左手で殴った……これは光流が本気であるのに違いなかった。
ギター弾きが利き手で殴るなんていう、ギターが弾けなくなるかもしれないような真似を、あろうことかこの光流がするなんて……!
つきあいの長い僕でも、初めて遭遇した出来事だった。
その本気のパンチをくらって、ぶっとんで激しく地面に叩きつけられて。
それでも僕は驚きのあまり何も言えず、何も考えられず、ボーッとただ光流を見上げることしかできなかった。
「ばかやろうっ!! いいかげん、正気に戻ったらどうなんだっ!!」
右頬がじくじくとした痛みを訴えはじめるや否や、降ってきた光流の怒鳴り声。
「いつまでカッカしてるつもりだよ、少しは落ち着けッ!!」
「光流……」
「一緒に行って何するんだよ!? おまえみたいに頭に血ィ上らせたバカが付いて行ったところで、迷惑にこそなっても、何の解決にもなりゃしねーんだよ! ただわめくだけしかできない奴が、何をどーにかできるってんだ! ――そりゃあ、おまえの彼女のことだ、心配するなって方が無理だってことくらい、解ってる。けど、わめく以外にも心配する方法はあるだろう? 付いて行くほかにも、おまえにできることはあるだろうが!?」
「…………」