僕たちの時間(とき)
 光流は僕に歩み寄ると、僕の腕を掴んで、立ち上がるのに手を貸してくれた。

 しかし僕は、恥ずかしさのあまり、そんな光流の顔をまともに見られなかった。

 全て光流の言う通りだということに…、その時になって初めて、気が付いたから……。

 思い返してみれば、光流は僕が取り乱している間中ずっと冷静だった。

 動くこともできなかった僕達に『救急車』と指示したのも光流だ。

 水月の心配をしながらも、光流は冷静に先を考えていたのだ。

 そんな光流の心に気付かず、最後まで冷静さを見失ったまま当たり散らしていた自分は何て大馬鹿者だったのだろうと、心の底から恥ずかしく思った。

「ごめん、光流……」

 あやまって済むことではないけれど……。

「ごめん、目ェ醒めた……」

「アタマ、冷えたか?」

「あぁ……」

 そして改めて光流に向き直り、言った。

「水月の家に、電話入れてくる」

 光流はそこで初めて満足そうに笑い、

「カオ、殴って悪かったな」

 言って、“右手”で僕の後ろ頭をひっぱたいたのだった。
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