僕たちの時間(とき)




 ようやく水月の家に着いた。

 真夏の炎天下の中、バス停からてくてく歩き通してきたせいか、僕の頬に幾粒かの汗が滑り落ちる。

 そっと門を開け、庭に入った。

 花好きな水月の母親のおかげだろう、庭中夏の花が咲き乱れている。

 玄関の近くまで行くと、犬小屋で寝そべっていたシベリアン・ハスキーのシルヴィ(メス・三歳)が僕の気配に気付き、ピクッと顔を持ち上げた。

「よぉ、シルヴィ」

「わうんっ!」

 シルヴィは繋がれていないため、いつものように、走ってくると勢いよく僕に飛びついた。

 ちゃんと番犬になっているのかと疑ってしまうほど、人懐っこい犬なのだ。

「わうわうわうわうわうんっ!」

「はいはいはい、後で遊んでやるからさっ。ちょっと纏わりつかないでくれ」

 僕はシルヴィをなだめながら、ドアの前まで行き、インターホンに手を伸ばす。

 ――と、その途端。

「シルヴィ、どうしたの? 誰か来た?」

 声がドアの向こう側で聞こえたと思った瞬間、シルヴィ以上の勢いのよさで、バンッとドアが開かれた。

「でっ……!!」

 そうなると当然、ドアが僕の顔面にゴンッと音が立つほど派手にぶち当たるのは、…間違いないワケで。

 あまりに突然のことでもあり、シルヴィにじゃれつかれていてバランスが不安定だったためでもあり、とにかく僕はふっとばされ、尻餅をついていた。

「いっ…いででででッ……!」

「やだ、誰かいたのっ!? すみません、大丈夫ですか!? ――って……なーんだ、聡くんじゃないの! ごっめんねぇ、痛かったー?」

「まっ、満月(まつき)さんっ……!!?」
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