僕たちの時間(とき)
 ドアの陰から姿を見せた…僕が『満月さん』と呼んだ女性(ひと)――藤沢満月さんは、水月の姉で、確か今19歳の女子大生。

 しかも驚くなかれ、あの光流の恋人(カノジョ)でも、ある。

 とにかく美人な人で、長身のセクシーダイナマイツなナイスバディに、はっきりとした顔だち、真っ直ぐで艶やかなワンレングスのロングヘア、…という、水月とはまた別の雰囲気の、言ってみればゴージャスな“女王様”タイプの人。

 ――でも、ただ綺麗なだけの人じゃない。

「もぉ、なーにいつまでもボケッと座り込んでるの! まだ若いくせに、ボケボケしてたら老けるわよ! ホラ立って!」

 さすが、あの食えない光流とタメ張ってつきあえるだけのことはある。

 とっさに起こった物事にも動じない超ワイルドな性格、なんてモノまで持ち合わせているという、何ともいえなくすごい女性だ。


「そんな言い方、聡さんに失礼でしょ! 今のはまぁちゃんがいけないんだから」

 言いながら、救急箱を手に出てきた女の子。

「あぁ、むぅ。いいとこに来た。聡くんの手当てしてあげてよ。やっぱ怪我しちゃってるわ」

 ああ見えて細かいことには良く気が付く満月さんは、血がにじんでいる僕の額を見やりながらそう言った。

「当たり前よ! ――お久しぶり、聡さん」

「やぁ、睦月(むつき)ちゃん……」
< 38 / 281 >

この作品をシェア

pagetop