僕たちの時間(とき)
「そーいや、水月は? 今、居ないんですか?」

 その言葉で、僕の額に消毒薬をぬっていた睦月ちゃんの手が、ふいに止まった。

 げっ、押しつけないでほしいっ!!

「いっ…てェ―――っっ!!」

 傷に思いっきり染み、痛さに叫んで勢いよく頭を後ろに引っ張った。

「やだ、ごめんなさいっ!」

 睦月ちゃんも、反射的に手を引っ込める。

 しかし驚いたような表情で、僕をまじまじと見つめた。

 困って反対側を見やると、同じような顔で満月さんも僕を見つめている。

「な…何か……?」

 いきなりそんなカオされても……ワケがわからないってば。

「聡さん、知らなかったんですか?」

「は?」

 僕はただただ、目が点状態。

「むぅ、あんた連絡しなかったの?」

「あたしは、みぃちゃんが自分でしたとばかり、思ってたんだけど……?」

「だぁから、何をっ!!」

(この、のーてんき姉妹っ!!)

「だから、さっきまぁちゃんが玄関に出てきてたワケ、ですよ」

 僕の傷に絆創膏を貼りながら睦月ちゃんは言う。

 でも、やっぱりワケがわからない。

「まぁちゃん、みぃちゃんのとこへ行こうとしてたんです。――ハイ、できたっと」

「水月のとこ…? それって……」

「お見舞いに行くところだったの、みぃの」

「水月の、お見舞い…? ――って、まさか……!?」

「やっぱり聡くん、何も知らなかったんだ。――みぃはね、あれからずっと入院してるのよ」

「何…だって……?」
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