僕たちの時間(とき)
*
「どうかしたの? 聡くん」
エレベーターのボタンを押しながら、しれっとした顔で満月さんは言った。
チンッという音と共に扉が開き、箱の中に乗り込んで。
そして僕は聞く。
「何か変ですか? オレ」
「『変』てゆーか……何となく落ち着かないって感じかな? そわそわしてる」
言われて思わずギクッとした。
エレベーターが上昇を始める。2階までなんて、ほんの数秒だ。
その数秒の間、僕は緊張しっぱなしだった。
満月さんに感付かれないように、何とか平常心を保とうとして。
だが2階に着き、フロアに降り立った時。
「――無理してる」
満月さんが、僕を見上げてそう言った。
「わたしの言ったこと、図星でしょ? 胸の内では動揺してるのに、必死こいて隠してマスってカオしてる。さっきからずっと」
やはりこの人には、隠し事だろーが何だろーが、通用してくれないらしい……それ以前に、僕が表情に出しやすい単純な性格してるっていうのも、あるのかもしれないけど……――まぁ、それは置いといて。
引きつりながらも笑顔で答える。
「や、やだなぁ…! それはホラ、久々に水月に会えるから緊張するってゆーかぁ……」
「ホントにそれだけぇ……?」
どうしてこう人を見抜くんだろう、この人は……。
「さぁとぉしぃくぅーんッ?」
…ったく、僕の負けだ。
「そーですよ! オレ病院嫌いなんです! みっともないけど、このトシになっても苦手なんです! どーもすいませんねッ!!」
「ははぁーんっ…? さては昔、注射が嫌で逃げ回っていたクチだなぁ?」
「うっ、それわっ……!」
「どうかしたの? 聡くん」
エレベーターのボタンを押しながら、しれっとした顔で満月さんは言った。
チンッという音と共に扉が開き、箱の中に乗り込んで。
そして僕は聞く。
「何か変ですか? オレ」
「『変』てゆーか……何となく落ち着かないって感じかな? そわそわしてる」
言われて思わずギクッとした。
エレベーターが上昇を始める。2階までなんて、ほんの数秒だ。
その数秒の間、僕は緊張しっぱなしだった。
満月さんに感付かれないように、何とか平常心を保とうとして。
だが2階に着き、フロアに降り立った時。
「――無理してる」
満月さんが、僕を見上げてそう言った。
「わたしの言ったこと、図星でしょ? 胸の内では動揺してるのに、必死こいて隠してマスってカオしてる。さっきからずっと」
やはりこの人には、隠し事だろーが何だろーが、通用してくれないらしい……それ以前に、僕が表情に出しやすい単純な性格してるっていうのも、あるのかもしれないけど……――まぁ、それは置いといて。
引きつりながらも笑顔で答える。
「や、やだなぁ…! それはホラ、久々に水月に会えるから緊張するってゆーかぁ……」
「ホントにそれだけぇ……?」
どうしてこう人を見抜くんだろう、この人は……。
「さぁとぉしぃくぅーんッ?」
…ったく、僕の負けだ。
「そーですよ! オレ病院嫌いなんです! みっともないけど、このトシになっても苦手なんです! どーもすいませんねッ!!」
「ははぁーんっ…? さては昔、注射が嫌で逃げ回っていたクチだなぁ?」
「うっ、それわっ……!」