僕たちの時間(とき)
「母さん……」

 満月の、そう小さく呟いた声に反応して、母の肩がピクッと震える。

「話しちゃってよ、みんな。その方が母さんだって、楽になれるでしょう?」

「満月……」

「わたし…、何聞いても、驚かないからさ……」

「…………」

 母は、少しの間、無言で手の中のカップに視線を落としていた。

 …が、それからフッと、淋し気に微笑む。

「強いわね、満月は……もう、解っているのね……」

「じゃあ、やっぱり……」

「そう、水月の言った通りよ。――あの子の病気、肺ガンらしいの……」

「まさか!! みぃは煙草なんて、1度もっ……!!」

「ええ、吸ったことなんてないでしょうね。ましてや隠れて吸うような子でもないものね、あの子は」

「それ以前に! 自分の身体を壊すような真似は死んだってしないわよ、あの子はっ!! そんなの、母さんだってよく知ってることでしょ!? なのに、どうしてみぃが肺ガンなのよ!!」

「これは医者(せんせい)から教えていただいたことなんだけど……肺ガンにはね、タイプが2つ、あるらしいの。1つは、患者さんの大部分が喫煙者で、原因が煙草にあると言われているもの。もう1つは、それ以外に原因があると言われているもの。――水月は“後者”の方、らしいわ……。

 そちらは直接の原因がハッキリしていないらしいけど……原因の1つとして、環境汚染も挙げられているの」

「『環境…』、ですって……?」

 言ったすぐ後で、満月にはピンと来た。

(もしかしてッ……!?)
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