僕たちの時間(とき)




 いつからだったろう、僕が彼女を好きになったのは……。

 気がつくと僕は“ありふれた日常”という“庭”の中に“花”を咲かせたいと、そう願うようになっていた。

 ――“彼女”という“花”を……。

 彼女の姿を目で追っているだけで、何故か嬉しかった。

 彼女の存在が、僕の心の全てを占めはじめていた。

 僕にとって、彼女は“水”だったのだ。心の渇きを潤してくれる、優しい水…―――。

 それが藤沢(ふじさわ)水月(みつき)だった。

 これを“恋”と呼ぶのなら……僕はまさしく、藤沢に恋をしていた。
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