僕たちの時間(とき)




 聡が病室から去った後……遠ざかる足音を聞きながら、水月の頬を涙が伝った。

 涙はとめどなく、流れ落ちて、うつむいた水月の膝を濡らした。嗚咽がもれ、膝を抱えて突っ伏す。両肩が震える。

 水月は声を上げて泣いていた。そのまま、ずっと……。


 ――それを知っていたのは。

 水月を朱く包み込んでいた夕日と、

 ドアの外で立ち尽くす満月だけ、だった―――。
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