僕たちの時間(とき)
*
僕には、7つ年の離れた『明(あかり)』という名の妹がいた。
明は、僕にとって大事な存在だった。
昔から、ウチは両親が共働きで忙しかった為、明の面倒を見るのは僕の役目であり。
帰宅の遅くなる母親の代わりに、保育園に迎えに行くのも僕だったし、夕食を作って食べさせるのも僕だった。
明のために、僕はいつだって“しっかりしたお兄ちゃん”でいなければならなかった。
明にとっての僕は、“兄”であると同時に“母親”でもあったから……。
明は、僕を頼り切っていた。
僕に懐く明を大切に…愛しいと思うようになったのは、一体いつのことだったろう。
始めは、纏わりついてくる明が、すごくうっとうしくて仕方無かった。
母親の仕事復帰のせいで、小学4年生にして妹の世話を余儀なくされた時、僕は大いに不満だった。
小学生ともなれば、友人とのつきあいもある。
一番友達と遊びたい時期だ。
どうして自分だけ妹の面倒なんか…と、明に当たったこともしばしばだった。
しかし明は。僕がどんなに冷たくしても、どんなに怒鳴っても、僕から離れようとはしなかった。
泣きながらも、僕に縋りついてきた。
そして解ったのだ。
――明は淋しいのだと……。
甘えたくても、母親はたまにしかいない。
だから僕しかいなかったのだ。
明には僕が全てだったのだ。
明だって一番母親に甘えたい時期だ。
決して自分だけじゃないのに。それを、僕は……!
僕には、7つ年の離れた『明(あかり)』という名の妹がいた。
明は、僕にとって大事な存在だった。
昔から、ウチは両親が共働きで忙しかった為、明の面倒を見るのは僕の役目であり。
帰宅の遅くなる母親の代わりに、保育園に迎えに行くのも僕だったし、夕食を作って食べさせるのも僕だった。
明のために、僕はいつだって“しっかりしたお兄ちゃん”でいなければならなかった。
明にとっての僕は、“兄”であると同時に“母親”でもあったから……。
明は、僕を頼り切っていた。
僕に懐く明を大切に…愛しいと思うようになったのは、一体いつのことだったろう。
始めは、纏わりついてくる明が、すごくうっとうしくて仕方無かった。
母親の仕事復帰のせいで、小学4年生にして妹の世話を余儀なくされた時、僕は大いに不満だった。
小学生ともなれば、友人とのつきあいもある。
一番友達と遊びたい時期だ。
どうして自分だけ妹の面倒なんか…と、明に当たったこともしばしばだった。
しかし明は。僕がどんなに冷たくしても、どんなに怒鳴っても、僕から離れようとはしなかった。
泣きながらも、僕に縋りついてきた。
そして解ったのだ。
――明は淋しいのだと……。
甘えたくても、母親はたまにしかいない。
だから僕しかいなかったのだ。
明には僕が全てだったのだ。
明だって一番母親に甘えたい時期だ。
決して自分だけじゃないのに。それを、僕は……!