僕たちの時間(とき)




 突然、僕の目にひときわ眩しいネオンが映った。

 顔を上げると、その光に向かって走っている路地が、僕の前にあった。

 まるでそこに誘(いざな)うかのように、光は輝く。

 だがしかし、あえて僕は見慣れた大通りの人込みの中へと曲がっていった。


 ――気がついてみると僕は、いつものライブハウスの入口の前で、1人ボンヤリと立ち尽くしていた……。


 僕は何も気付いてはいなかったのだ。

 選ぶべきではない道を歩みかけていること。

 それが、僕に寄せられる信頼を裏切ってしまうだろうものであること。

 そして何よりも……僕自身が正しい道を見失ってしまっている、ということにさえ……。


 今はただ、全てを忘れてしまいたかった。何もかもを。

 ただ、それだけだった……―――。
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