僕たちの時間(とき)

7.DREAM ――手をのばして求めたいもの

 ライブハウス《AMNESIA(アムネジア)》。

 僕達《ウォーター・ムーン》がよく出入りしているライブハウスであり、ちょくちょく演奏させてもらっているところだ。

《アムネジア》は、さほど大きくもないが小さくもなく、どこにでもあるような古びた建物ではあったが。

 しかし、中に入ればいつもだいたい満員で、普通のライブハウスにしては客の入りが格段にいい。

 一見すると目立たないようだが、知ってる人間には結構メジャースポットなのだ。

 この近辺に住んでいて“その道”に片足突っ込んでる奴なら、絶対に《アムネジア》は外さない。…ってくらいに。

 それは、ここで演奏しているグループのほとんどが、アマチュアにしてはレベルが高いせいだろう。

 採用を決めるオーナーの耳は、感服に値するほど確かだ。

 だが、そんなオーナーの実態は。“オーナー”なんていうカッコイイもんじゃなく、なかなか気のいいオジサンだ。

 常連サンの間じゃ既に『おやじさん』の呼び名が定着している。

 おやじさんにとって、まだ高校生だからか僕らが息子のように思えるらしく、何かと子供扱い…――いやいや、“親しく”させてもらっている。

 僕自身、週に何度か《アムネジア》でバイトさせてもらう、なんて待遇もいただいてるし。
 人当たりがいいのはおやじさんの特技だから、僕達に特別…ってことではないけれど。

 でも僕らもおやじさんを、その呼び名の通り“親父(ちちおや)”のように思っているから、わりかし何でも気軽に話せてしまうのだ。

 相談やら世間話やら。とりとめのないことから人生における不条理についてまで。

 何を言っても何を尋ねても、おやじさんは笑って話し相手になってくれ、時として助言も与えてくれる。叱咤されることもある。

(――だから…かも、しれないな……)

 僕の足がここに向いていたのは。

 おやじさんに会いたかったから……かも、しれない……。
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