僕たちの時間(とき)
 中に入ると、まるで音の洪水だ。

 自分に向かって、音が次々に、凄まじい迫力でもって押し寄せてくる。

 本当にいい音楽は、押し寄せる波となり、観客を乗せて湧き上がる。そしてスッポリと包み込む。全てを。

 そうなると観客には、もうその音しか聴こえない、唄っている、演奏している彼らしか見えない。

 そして歓声をあげて躍動する。

 ライブって、そういうものだと思う。

 ステージに立っていても、観客席で座っていても、そんな光景が僕は好きだ。

 どちらにいても、満足し、心踊る、――そんな時間(とき)。

 それを作り出したくて……そのために僕は唄っているのだろうと思う。

 でも僕らはまだ未熟で、そんな時間をいつでも作り出せる実力を持っていないから……。

 求めて求めて、掴もうと手をのばして……!
< 81 / 281 >

この作品をシェア

pagetop