僕たちの時間(とき)
「なかなかいい酔いっぷりだったわね」

『はるか』は、正面のソファ…ではなく、間に置かれたテーブルに腰掛けて、笑って僕を眺めていた。

「あぁ、ここにはスタッフの…――えぇと、タケシ、さん? …だっけ? …が、運んできたの。後片付けするのにジャマだから、おやじさんに『どかしとけ』って言われて」

 周囲を見回していた僕に気づいたのか、笑って『はるか』は教えてくれる。

「おやじさんならまだ中よ。帰る時に顔出せって言ってたわ。まあ、それは言わなくてもわかってるだろうけどっ」

 しかしリアルな夢だな、ずいぶんと……。

「やだ、もぉおっ! まーだ寝ボケてるのおっ!? さっさと起きなさいよーっ!!」

 テーブルから身を乗り出して、『はるか』がその細く冷たい指で僕の頬をピタピタはたく。

「いってェなぁ……」

 痛みや冷たさまで感じるなんて、ほんとリアル…――って、“感じる”なら夢じゃないじゃん!

(てことは、ホントに……?)

「あんた……!」

「やだ、私のことわかんない?」

「――『はるか』さん……? 《B・ハーツ》の……」

「ご明答っ!」

 そう言って、にっこりと『はるか』は笑う。

 でもどうして、僕の隣に『はるか』がいるワケなんだろう……?

 その時、僕はふいに額のタオルを思い出した。
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