僕たちの時間(とき)
「これ…、あんたが……?」
「そう。おやじさんは『ほっとけばそのうち起きる!』って言ってたんだけどね、私も一応は女だし、ちょっとお節介をやいてみました」
「あ、それはどうもありがとう……」
「どういたしまして! ――もう目は覚めたわね? 私、《B・ハーツ》の『はるか』。フルネームは一ノ瀬(いちのせ) 遥(はるか)。歳は18、高校3年よ。よろしく!」
「あ、えっと……オレは……」
「知ってるわ」
「え…?」
つられて自己紹介しようとした僕を遮り、遥は告げる。
「《ウォーター・ムーン》ヴォーカル兼ベースの『サトシ』。フルネームは渡辺 聡。現在16歳、高校2年生。――どぉ?」
「ご…ご明答……」
(な、何だ? 何なんだっ……?)
目を白黒させる僕を見つめ微笑み、しかし彼女は、更に驚く言葉を口にする。
「その他にも学校名や住所、誕生日から血液型まで、知ってるわよ?」
「何だよ、それ……」
「あら、わからない?」
小悪魔のような挑戦的な瞳に見つめられ、僕はひたすら戸惑うばかりで。
「わ…わかるはずねーよっ! 《B・ハーツ》なんていうビッグネームの人間が、どうしてオレ達みたいなバンドのメンバーのことを知りつくしてるのか、なんて……!」
「バカね……」
遥はそう呟くと、魅惑的な瞳で僕をじっと見つめた。
「確かに……そうね、《ウォーター・ムーン》にも、興味はあるわね。でも、私が知っているのは君のことだけよ、サトシくん? ――私の興味は、あなただけなの」
何で…? ――そう訊こうとしたが、声が出なかった。
吸い込まれそうな遥の瞳から、目を逸らすことができなくなって。
“理由”、なんて……もう僕には、予想がついていたと思う……。
「そう。おやじさんは『ほっとけばそのうち起きる!』って言ってたんだけどね、私も一応は女だし、ちょっとお節介をやいてみました」
「あ、それはどうもありがとう……」
「どういたしまして! ――もう目は覚めたわね? 私、《B・ハーツ》の『はるか』。フルネームは一ノ瀬(いちのせ) 遥(はるか)。歳は18、高校3年よ。よろしく!」
「あ、えっと……オレは……」
「知ってるわ」
「え…?」
つられて自己紹介しようとした僕を遮り、遥は告げる。
「《ウォーター・ムーン》ヴォーカル兼ベースの『サトシ』。フルネームは渡辺 聡。現在16歳、高校2年生。――どぉ?」
「ご…ご明答……」
(な、何だ? 何なんだっ……?)
目を白黒させる僕を見つめ微笑み、しかし彼女は、更に驚く言葉を口にする。
「その他にも学校名や住所、誕生日から血液型まで、知ってるわよ?」
「何だよ、それ……」
「あら、わからない?」
小悪魔のような挑戦的な瞳に見つめられ、僕はひたすら戸惑うばかりで。
「わ…わかるはずねーよっ! 《B・ハーツ》なんていうビッグネームの人間が、どうしてオレ達みたいなバンドのメンバーのことを知りつくしてるのか、なんて……!」
「バカね……」
遥はそう呟くと、魅惑的な瞳で僕をじっと見つめた。
「確かに……そうね、《ウォーター・ムーン》にも、興味はあるわね。でも、私が知っているのは君のことだけよ、サトシくん? ――私の興味は、あなただけなの」
何で…? ――そう訊こうとしたが、声が出なかった。
吸い込まれそうな遥の瞳から、目を逸らすことができなくなって。
“理由”、なんて……もう僕には、予想がついていたと思う……。